長過ぎる序文
イチ・ニー・ヨン・トー
昭和40年代後半、多くの人が「30,000 点持ち」で半荘を開始していた。
TV番組11PM
でも、いろんな雑誌の誌上対局でも、そして家庭でも、会社の同僚と飲み会の後で囲む時も。もちろん、昔からのルールを踏襲しているグループでは「2,000 点持ち」なんてのも存在はしたが、主流とは言えなかった。
「トップウマ」や「順位ウマ」という考え方はあったけど、そんなに広まってはいなかった。
初めて「27,000 点持ち」というルールに遭遇した時に、同時に「トップ賞」という言葉を知った。開始時に差し引かれた「12,000(=3,000 × 4)点」がトップ者へのオプションで、トップを取るのはとても偉いことが判明した。
そして、「25,000 点持ち」なんて広まってしまってからは、「麻雀はトップを取るゲームだ」なんて言い出す奴まで出てきた。
それ以前にもこんな奴は多くいたけど、一般の愛好家が楽しむ麻雀で、トップの価値を誰もが認めだしたのは「25,000 点持ち」が広まってからだろう。
半荘が始まる時には自分の点箱に、一万点棒を1本、五千点棒を2本、千点棒を4本、百点棒を10本入れて、25,000 点。五百点棒なんて無かった。
「イチ・ニー・ヨン・トー」はこの時に口にする呪文だった。
ブーの遺産
昭和初期の第一次ブームとも、昭和40年代の第二次ブームのどちらにも属さないブームがあった。大阪で発祥し、後に西日本を席巻したブー麻雀(ブーマン)だ。
ブーマンでは最終得点のいかんに関わらず、一人の「勝ち」が決まる。その他は「引き分け」か「負け」のどちらか。「引き分け」者が存在せず、勝者以外の3人全員が「負け」になる場合もある。
ゲーム終了時に最多得点者が「勝ち」、その他は原点より浮いた状態であれば「引き分け」、原点より沈んだ状態は「負け」。
ブーマンは(他の麻雀ルールと同様に)バクチの一種であるので、この「最終得点のいかんに関わらず」というのは、精算が簡単だというメリットがあった。
ブーマンが後に他のルールに遺したモノとして「ドボン」が最も有名だが、「原点からの浮き沈み状態」という価値観を生み出したのもブーマンだ。
その他にも「得点の多寡に関わらない単独の勝者」や「一定点数に達したら半荘終了(天辺)」などがある。
*ブーマンについての詳細は、【雑録】「ブーマンの規則」でどうぞ。
トップこそ唯一の勝者
古川凱章が提唱したのは「トップ者が勝ち(+1)、2着3着は引き分け(0)、4着が負け(-1)」とする評価体系。「101(イチマルイチ)」の元々の意味は「+1、0、0、-1」だ。
評価結果に順位以外の要素(持ち点)は反映されないシンプルなものだ。
およそ世の中にたくさんある多くのゲーム(競技)にこの考えは広まっている。
野球だって、サッカーだってそうである。最終得点が「3対0」でも「99対98」でも勝ちに差はない。
テニスの勝者に獲得したセット数の差は無関係だし、将棋で何手で指し終えても持ち駒がいくらあろうと「勝ちの価値」は等しい。ただ「勝ち」なだけだ。
例を挙げるとキリがないが、およそ勝敗を競うほとんどのメジャーな競技で、「勝ち」以外の途中経過(持ち点の多寡に相当する部分)を考慮することは稀なことだ。
ところが、(ブー麻雀と101競技以外の)麻雀規則では、唯一の「勝ち」以外の「価値(=最終得点)」を考慮することが主流である。
これは麻雀というゲームが元々、持ち点による「清算」を前提としたバクチであることに由来し、その呪縛から逃れられていないからだろう(とアタキは思っているが、別にその呪縛から逃れるべきだとも思っていない/念の為)。
順位点(順位ウマ)の誕生
各種団体では競技性を高める目的のために、フリー雀荘ではトップ以外の攻防にも面白さ(価値)を付加する目的で順位点(順位ウマ)が生まれた。目的そのものを最初から意図していたかどうかは別にして。
他のタイマン競技と違って4者で戦うので、どうしても2着3着の扱いをどうすべって感じで、101のように引き分けに統一するのもどうかって感じで順位点の導入は自然なことのようにも思える。
トップ賞(オカ)と順位ウマのブレンド具合が、そのルールのコクというか肝というかそんな感じで、それによって各局ごとの戦い方が決定したり、そのコミュニティ内での振る舞い方(マナーに近いかな?)が決まる。
アタキが初めて入る雀荘では和了規則よりもウマの規則の方を最初にしっかりと確認することが多い。和了規則は勝負の途中でも確認できるもんね。
オカと順位ウマだけでなく、「浮き沈み状態」も考慮されることで、世の中にいろんなウマが生まれた。知らないとカオスを感じるかもしれないが、その実、そんなにややこしいものではない。
半荘という単位が育んだ面白さ
局ごとの単純な勝負の積み重ねが、いわゆる「素点」に反映される。
オカと順位ウマ(と浮き沈み)を考慮することにより、素点だけの時には味わえなかった面白さが増すのは前述の通り。
見逃し、狙い撃ち、無理な仕掛け、極端な高目取り、振聴リーチ等は、ただ「素点」を積み重ねるだけの単純な規則にはあまり意味のない戦術であり、オカと順位ウマがあるからこそ有意義な戦術(あるいは付加価値の高い戦術)だと言える。
ぼくらのやってる麻雀がこんなに面白いことの理由のひとつに、オカと順位ウマがあるんだ。うん。
いろんなウマとその性質
なんか以前にもどこかにアップしたかもしれんけど、チトおさらい。
- 25,000 点持ちのオカ無し
- トップ以外の着順は無意味なので、トップ者以外は素点追求に走る。
- 25,000 点持ちのワンツー(あるいはゴットー)
- トップ賞以外に、2着に+10ポイント、3着に-10ポイント、4着に-20ポイントが加算される規則。
なんかこれバランス悪いんじゃない、なんて、初めてこの規則を知った時に思ったけどそうじゃなかった。より上位の着順になるにつれ価値が増すんだ。
4着から3着へは+10ポイント、3着から2着へは+20ポイント、2着からトップへは+30ポイント(オカと合わせて)という計算。
ゴットーの場合は、ワンスリーよりも素点が重要で、着順アップ分のオプションの相対差は大きい(4着から上へは、+5/+10/+25)。 - 連盟公式ルール
- トップ賞は無しで浮き沈み状態と着順によるウマ。日本プロ麻雀連盟の公式ルール。
昔ながらの競技規則でトップ賞がないのでいわゆる素点が一番大事。トップ者とラス者の差は最大でも20ポイント。トップと2着の差は4~13ポイントで他のルールと比べると素点に重きが置かれている。 - 25,000 点持ちのワンスリー
- これが言いたくて、このコラムをアップしたのじゃ。次章で。