できごと、思っていること

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木村政彦はなぜ

2014-08-18

三年前に出版された木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのかを遅ればせながら読了しました。
胸が熱くなりました。 感動しました。
今の気持ちを「感動」の一言で済ますのがもったいなくて、ここに書くことにします。

このスタコラに、読書感想文や映画演劇紹介文、お気に入りの音楽や趣味の話もたまにはいいですよね。
(スタコラメンバーの皆様へ)

木村政彦という一人の格闘家(柔道家・レスラー)の生涯をまとめたノンフィクション。 タイトルはミステリー仕立てですが、内容は伝記です。
とにかくむちゃくちゃに強い柔道家がいて、その師匠もこれまた強くて、常軌を逸したトレーニングを続け、さらに強くなって、プロレスラーになって、事件が起きて、世の中からその存在を忘れられて、決して幸福とは呼べない一生だった(かもしれない)男の物語です。

日本一が13年連続、15年間不敗のまま柔道界を引退、40歳を超えた指導者時代でも当時のオリンピック出場選手よりも強かったなどの逸話に驚かされるとともに、その愚直なまでに勝負にこだわる姿勢は、スーパーヒーロー物語として充分に楽しめます。
ミステリーではないのですが、衝撃の事実(というかその真相)や、最後の最後に語られる愕然とする真実、あとがきで知らされることなどもこの本が売れた原因なのでしょう。 大河小説で味わうようなカタルシスも味わうことができます。

ですが読み終わった今、一番感じるのは、この著者(小説家・増田俊也)が持っている木村政彦への愛・尊敬・無念を晴らしたいという気持ちの真っ直ぐさのような気がします。
著者は代弁者でも弁護人でもなく、木村のファンと呼ぶのが近いのかもしれません。
直接には書かれていない著者の思い、本当はこうだったんだ、こんな人だったんだという悲痛なまでの叫びが、分厚い本のあちこちから聞こえてくるようでもあります。

趣味は読書、と言えなくなって何年も経ちます。
いわゆるビジネス本や技術書以外の本を読むことが、いつのまにか少なくなってしまったのですが、ベストセラーとなる本には面白い本があるのだなぁ、なんて当たり前のことを思いました。